第27章 【痛みを知る者】
「死んだところで人にいらん事をするような奴はどうせ堪(こた)えへん。一瞬はショックでもすぐ忘れてまうに決まってる。何でそんな奴らの為に私が死ななあかんの、冗談やないわ。」
美沙にしては強い口調で語られたその言葉に力は胸がいっぱいになる思いがした。やっぱり俺はこいつを離したくない、頭おかしいとか依存してるとかどうでもいい、本当は寂しがりの甘えたなのにずっと孤独を感じ続けてそれでも耐えて、友達が危なかったら当たり前のように助けに行こうとして、こんな俺を好きだとまで言ってくれる奴をどうして離すことが出来るんだ。
「兄さん何でまた泣いてるん、お願いやから泣かんといて。」
美沙が甘えたモードに入った声で言った。
「ああ、ごめん。」
鼻をすすって力は言った。
「美沙、お前今幸せかい。」
「うん。」
絆創膏が貼られた顔で美沙は笑った。
「だから兄さんはどっか行かんといてな。」
「馬鹿。」
同じ台詞を言っている兄妹、はたから見ればこれで何度目だと言いたくなるだろう。しかし縁下力と縁下美沙にとっては今それが一番大切な事だった。