第26章 【外伝 怪童と義兄妹】
なんだかんだで縁下美沙はその兄に連れられて去っていった。後には牛島と及川が残される。
「一体あの兄妹は何だ。あの歳の近さで手を繋いだりするものか。」
「そうしたいんだろうね、特に縁下君は。」
「あいつは何に怯えている、妹が離れない事をわかっているというのに。」
「知らない所でいなくなるのが怖いんでしょ、だからあーやって目の届くことに置こうとするんだよ。」
「全て守りきれるものではないだろう。」
及川はクスリと笑った。
「それも縁下君はわかってるだろうね。子供の頃から兄妹だった訳じゃなくてこの先どーなるかわかんないからせめて今だけ、なんじゃない。」
「わかるのか。」
「推測だよ。本当のことはわかんない。」
へらりとした態度を崩さない及川に牛島はかすかに眉をひそめる。
「お前のその優越感は何だ。」
「べっつにー、なーんも考えてないけど。どしたのウシワカちゃん、何か悔しいの。」
「馬鹿馬鹿しい。どうせバレーの事には関係ない。それからその呼び方やめろ、他校の女子にまで広めるとはどういった訳だ。」
「何で俺にクレーム来る訳。」
「あのエンノシタ妹とやらがクレームはお前に入れろと。」
「何それ美沙ちゃんひどいっ。」
ブツブツ言いながらスマホを取り出し縁下美沙に何やら送信しだす及川をほっといて牛島はぼうっと前を向いていたがふと気がついた。
「及川、お前は何故エンノシタ、の妹とやらを気にする。」
「別にウシワカちゃんには関係ないでしょ。」
「いくらお前と言えど路上でセクハラまでするのは異常だ。」
「ちょっと、ウシワカちゃんに岩ちゃんと同じこと言われるとか最悪。」
「それは俺の預かり知るところじゃない。」
及川はふんだ、と呟き、しかしすぐにほほえむ。
「君も見たでしょ、さっきまで格好いいこと言ってたかと思ったらおにーちゃん絡むとデレたりしてさ、あのギャップの激しさがたまんないんだよね。」
「よくわからん。」
「まーあの子の良さは時間経たないとわかんないよね。下手すりゃウシワカちゃんには一生わかんないかな。」
「それこそどうでもいい事だ。」
「はいはい、さよさよ。ああっまた美沙ちゃんの言い方うつってるしっ。」
牛島は付き合ってられないと呟き、及川をスルーして帰路に着いた。
次章に続く