第26章 【外伝 怪童と義兄妹】

「こいつは、美沙はそういうことから逃げないし、俺に対しても多少意見の食い違いがあっても離れないので。」
「逃げないのならそこまでする事もないだろう。」
「あまりに逃げないから」

縁下力は言った。

「守ってやりたいんです。」
「兄さん、私は」
「美沙、ちっと黙ってて。」
「う。」

牛島はふぅと息をついた。今ので何となくわかった気がする。

「依存か。」
「ご名答です。」

苦笑しつつも否定しない縁下力、向こうで及川がクスクス笑っている。おそらく縁下兄妹の依存ぶりを随分前から知っていたのだろう。

「烏野には妙な奴が多いな。」
「さぁどうでしょう。」

縁下力はぼやけた笑みを浮かべ、横にいる義妹の方は目を伏せた。

「とりあえずこれだけは言っておく。」

牛島はこれ以上は聞いても無駄だと判断しため息をついた。ため息をつく牛島というのはなかなか希少かもしれない。

「次に腕輪をやるならサイズを確認してやれ。」
「ああ、こっちにつけてる奴ですか。」
「さっき落としてもてん。」
「次から気をつけます。」
「いやあの兄さん、３つ目になってまうから私別に。」
「既に２つあるのか。」
「なんにせよ、」

縁下力はやんわりと話をぶった切った。穏やかな物腰でなかなかやると牛島は思う。

「こいつは連れて帰ります。お手間かけました。ほら、美沙。」
「ありがとうございました、失礼します。」

兄妹は牛島に頭を下げ、及川にも声をかける。

「及川さんもありがとうございます。」
「どういたしましてー。毎度大変だね、縁下君。」
「まあ友達見捨てるような子でも困りますけど。」
「ところでおにーちゃん以外は抱っこ禁止て何なの。」
「まず第一になんでそんな話になったんですか。」
「この人いきなり抱っこしてくんねん。」
「睨まないでよ、縁下君。」
「岩泉さんに報告しますね。」
「それだけはやめてっ。」

あいつらは何の話をしているのかと牛島はぽかんとするしかなかった。