第26章 【外伝 怪童と義兄妹】
が、
「あっれー、ウシワカちゃんいたんだー。」
「その呼び方はやめろ、及川。おまけにわざとらしい。」
「君も大概お堅いねぇ、まあいいけど。」
「そのエンノシタ美沙はお前の彼女か。」
「まっさかぁ。そうしたいのはやまやまだけどさ、そんな事したら俺この子のおにーちゃんに殺されちゃう。」
「こ、こら、訳わからんこと言いなっ。」
確かに訳がわからないと牛島は思う。しかし及川は嘘だーと口を尖らせる。
「訳わかんなくないじゃん、縁下君他の男がちょっとでも君を気にしたら滅茶苦茶嫉妬して触ったらすんごく怒るじゃん。」
「そこまで知ってはるんやったら抱っこしようとせんといてってばっ。」
「だからウシワカちゃんも気をつけてねぇ、縁下力君、この子のおにーちゃんさ、おとなしい顔して妹絡むと凄いから。ウシワカちゃんでもきっと容赦しないと思うよー。」
「まず今お前の物言いが勘に障(さわ)るのだが。」
牛島はかなりイラっときていた。及川の意図が読めない。
「それにさっき写真を見たがあの覇気のなさそうな顔でそんな脅威があるとは思えん。」
「ちょっと」
縁下美沙がかなりムッとして言った。
「うちの兄さんを悪く言わんといてください。ちゅうかお宅様あれか、天然で言うてはるな、難儀なやっちゃ。」
「アハハハ、天下のウシワカが天然の美沙ちゃんに天然言われてる、ウケるー。」
「及川、貴様。」
「私天然ちゃうってば。ごく普通の動画投稿者になんちゅうことを。」
「美沙ちゃん、毎度言うけど嘘ついちゃダメでしょ。」
「嘘ちゃうもん。」
「嘘ついてんじゃん、どこが普通なのさ。」
「だって私」
「はいはい、絵が下手で動画再生数がドピコの底辺ってゆーんでしょ、美沙ちゃんの基準はオンラインだからね、それベースで普通とか言っちゃダメだからね。」
「一体何の話だ。」
「ウシワカちゃんはわかんなくていーの。」
「さっきからおちょくってるのか、及川。」
及川はニッと笑った。
「ウシワカちゃんこそ、この子捕まえてどういうつもり。別にナンパした訳でもなさそーだけど。」
「落とし物を拾ってやったついでだ。特に意図はない。」
「嘘だ、何か面白そうだから首突っ込んだでしょ。」
流石に牛島は違うと言えなかった。興味があったのは確かだ。