第4章 【待ち合わせ】
「俺らだって先に来たっすよー。」
田中が声を上げる。
「思いついた奴が遅刻ってかっこつかねーもんなっ。」
言う西谷に力はボソリと呟く。
「それを他にもうまく適用してもらいたいもんだけど。」
「うぐっ。こ、こまけーことはいいんだよっ。」
「ハハハ。」
「あ、力っ、てめーおちょくりやがったなっ。」
「それくらいは勘弁してやれってノヤっさん、何せこいつ最近は、ウププ。」
「田中、お前次勉強で何か聞いてきても俺知らないぞ。」
「ナヌっ。」
「因みに美沙に聞くのもなしな。」
「おめっ、何でそれをっ。」
「英語くらいなら美沙に聞けるとか思ってるだろ、バレバレなんだよ。」
「チキショーッ、何て徹底した野郎だっ。」
一方の美沙はそんな様子を力の隣で黙ってみていた。
「お。」
菅原が何か気づいたのか美沙の顔を覗き込んできた。
「美沙ちゃんが笑ってる。」
「ふっ、ふぎゃああ。」
言われて美沙は慌てる。しかしこれがよろしくなかった。菅原が吹き出したのだ。
「ふ、ふぎゃあって、ふぎゃあって。」
しもた、やってもたと美沙は思うがもう遅い。
「ヤバい、いいもん見たかも。」
「す、菅原先輩、なななな何を言うてはるんですか。」
「縁下ー、妹がふぎゃあとか言ってんだけどー。キャラ崩壊してないかー。」
「あっ、こらっ。」
「それは素なんでほっといてやってくださーい。」
「ということなんだけど。」
「ちょおっ、兄さんっ。」
美沙は抗議するが義兄は背を向けてあからさまに無視をする。
「あかん、最近兄さんもたまに無茶しよる。」
「愛されてんなぁ、このこの。」
「菅原先輩もどないしはったんですか。」
「どないも何も面白いから。」
「はて。」
半分ボケと称される美沙は相変わらず自分が時折無自覚である部分が笑いを誘っていることに気づいていない。