第24章 【合宿 終幕】
そんな充実している一方、やかましい昼休みなどを過ごしているうちにそれぞれの学校は帰ることになる。音駒の山本と田中そして西谷は相変わらず別れ際も無駄にうるさく、主将組は何とも言えない圧をお互い醸し出し、夜久や菅原など保護者ポジションの奴らはお互いの後輩に対する苦労を語り、女子組はやはりそれらしきトークで盛り上がる。1年組はハイテンションとローテンションで真っ二つに分かれてわいわいやっていた訳だが一方でやはりというか、力は赤葦と語っていた。
「何か色んな意味で世話になっちゃったね。」
「こっちは色んな意味で面白かったよ。人は見た目によらないって事をこんだけ実感したの初めてかも。」
力はあははと苦笑するしかない。
「ごめんよ、恥ずかしいとこ見せたかな。」
「別に、俺も好きで首突っ込んだとこあるし。」
「それが何遍考えても意外なんだよな。」
「君が夜中に電話するくらい夢中になるってどんなのかなって思ったら、ね。予想以上に特化したタイプだったけど。」
「違いないな。」
力は額に汗を浮かべるしかない。
「でも」
赤葦は呟いた。
「正直凄いって思った。」
最後まで意外なことを言う赤葦に力は驚き、失礼とわかりつつその顔を見つめる。
「元は全くの他人だったんだろ。」
「あ、あぁ。」
「兄妹になってからの時間もしれてるよな。」
「そうだな。」
「なのに境目越えるくらいお互い信じて好きになれるってちょっと俺には想像つかない。」
「他でも言われた事あるよ、普通はそうなのかもな。」
力は言った。
「美沙はよく言うんだ、自分はラッキーだって。おばあさんも亡くなって一族郎党誰も助けてくれなかったとこへ望まれてうちに引き取られたからって。」
「親御さんが望んだのか。」
「特に母さんが美沙のお母さんと友達でさ、美沙が1人になったって聞いて引き取るのに乗り気だったみたい。」
「へえ。」
「でも本当は俺の方がラッキーだったって思ってる。」
赤葦は何故、と先を促した。
「美沙は、あいつは、人見知りでビビリの癖に最初から俺を信じて疑ってなくて、俺から離れようとしなかったから。そうじゃなかったら俺は今でもあいつを受け入れてなかったと思う。あいつと関わることから逃げたと思う。」
「何があってもあの子だけは君から逃げない、か。」