• テキストサイズ

【ハイキュー】エンノシタイモウト第二部

第23章 【合宿 第六幕】


力は次の日、朝食をとりながら昨晩赤葦と見ていた義妹の美沙のライブ配信を思い返していた。

"兄さんが弱いと思た事はないです"

流れで兄は強いのかとオンラインの視聴者に聞かれた時の美沙の言葉が蘇る。

"うちの兄さんがホンマに弱いんやったらチームにおる私と学年一緒の奴らが兄さん慕わへんと思うし、兄さんのご同輩も兄さんの言うこと聞かへんやろし、先輩方も信じてくれたりせんと思う。"

美沙に投げられた質問が本当は技術的な意味だったのかはわからない。しかし美沙は自信を持って顔の見えない相手に一つの答えを出した。力にはわかる、あれは美沙が本当に思っている事だ。あの時スマホの向こうで画面を見つめながら背筋をしゃんとして言う義妹の姿が目に浮かぶようだ。そこまで考えて力は少し情けなくなった。義妹がここまで思ってくれているのに自分は卑怯にもまだ隠している事がある。飯を一口食して力は更に考えた。俺は何を恐れているんだろう、美沙が離れることか。でもあれだけ俺ががんじがらめに束縛してても逃げたがらないあいつが今更離れるのか。俺は何だかんだ言って美沙を信じていないのか、一応兄貴の癖に、どころかそれを踏み越えた癖にそれでも何かあったらあいつが自分から離れると思ってるのか。
縁下力は良い奴ではあるが、それ故かグチャグチャ考えてしまう。

「縁下。」

成田が心配そうに声をかけてきた。

「どうした、気分悪いのか。」
「あ、いや。」

力は慌てて言いつくろった。

「大丈夫、ちょっと寝ぼけてるだけ。」

成田はならいいけど、と呟く。

「変な無理するなよ、美沙さんが泣くぞ。」

力は違いないと苦笑し、そして決めた。夜になったらまたこそっと抜け出して美沙に電話をしよう。そして話そう、昔俺に何があったのか。もしかしたら赤葦君に聞かれるかもしれない、それでも構うもんかと思った。
/ 333ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp