第10章 加納
「加納って潔いんだな」
「そうかな?」
「そうゆうの尊敬する」
ふいに彼は笑った。
その笑顔から目が離せなかった。
初めて見た笑顔だったから。
中学の頃クラスの中で
いじめに遭っていた私を、彼が庇った。
まさか彼が、そんな事をするとは思わなかった。
私は内心冷めていたから、クラスの連中を蔑んでいた。
いじめなんていつの時代にもある事だし、10代なんて尚更だろう。
自分と合わない人間、生理的に不快な人間に無関心だったり、嫌がらせをしたり…
或いは気に入らない事への当て付けに。
皆仲良しなクラスなんて嘘だと思う。
本当にあっても寒気がする。
私へのいじめの原因は、恋愛感情のもつれ。
リーダー的女子の憧れの先輩と私が二人きりで帰ったのが、気に入らなかったから。
部活の買い出しの付き添いをしただけだが、そんなの言い訳にしか聞こえない彼女はいじめを始めた。
その時同じクラスだった白河君が
「いい加減にしなよ」
「何よ…白河君、加納の事好きな…」
“の”と言う前に、白河君はその女子の口を塞ぎ
「何でそうやって何でもかんでも恋愛に結びつけるわけ?想像力なさすぎだろ。あんたさ、自分の醜さちゃんと分かってる?」
「!!」
白河の辛辣な言葉に、その女子は顔を真っ赤にし、クラスの皆も静まりかえった。
私は白河君の行動に驚くだけだった。