第6章 ゲスの極み【天童 覚】
「あっれ〜?
古文のいのせんと
□□センセー!」
と聞き覚えのある
呑気な声。
『て…んどうくん…?』
神様に見えるんですけど。
中のおかしな状況に
気がついたのか
パタンと扉を閉めて
腕組みして扉に背もたれ、
こちらを見つめる天童くん。
扉を閉めたのは
私のこの格好を
他の生徒に見られないように
気遣ってくれたのだろうか……
「じ、邪魔をするな!」
初めて声を荒らげる
猪谷先生。
「えー?でもこれって
強姦デショ?
ねぇ?合意あり?ねェ?」
能天気そうに見える
天童くんの声が
強ばったように感じる
『ごっ、合意してないわ!』
私は先に答えて
猪谷先生から逃れようとする。
「だよねェ?先生?」
天童くんも
猪谷先生を責めるが
先生は
「天童には分からんかもしれんが
こういうプレイなんだ…
〇〇は恥ずかしくて
他人のフリをしようとしてるが、
私たちは恋人同士なんだ…
どうか放っておいてくれないか?」
と諭すように話し、
逃げようとする私の腕を
グッと固定し、動けなくする
『だっ!?』
誰がやねん!!
何を笑顔で怖いこと言ってるの!この人!
「ほぉ……?」
そして顎に手を当てて
妙に納得したようすの天童くん。
(ダメよ!そんなわけないでしょ!
騙されないで!)
でも何を言っても
さっきみたいに
プレイの一環とか言われたら…
「な?だから
出ていってくれ?」
『ーーっ』
どうすれば…
と半ば諦めていると…
「んー…
先生には悪いんだけどさァ…
〇〇ちゃんと付き合ってんの
俺だよ〜?」
と、こっちからも突拍子のない発言が耳に入る。
はい!?!?
ど、どういうこと!?!?
と天童くんの方に目を向けると
(任せて!)
と目が訴えているように感じる。
「う、嘘をつくな!
お前と話しているところなんて
見たことないぞ!」
思ったよりも狼狽える
猪谷先生
「□□先生!ほんとうなんです?」
こちらに向き直り
腕を掴む力が一層強くなる。