第6章 ゲスの極み【天童 覚】
『んーっ!』
手を伸ばして
棚と壁の間に見えている包帯を
取ろうとする
(あと少し…)
というところで
パチッ
目の前が真っ暗になる。
『っ!?!?』
え、なになに!?
怖い怖い怖い…
私は何が起こったのか分からず身構える
ひとまず包帯のことは
忘れて
振り返ると…
暗闇の中に
人の気配を感じる。
余計に怖い…
『だっ、だれ?』
「…□□先生…」
と、聞き覚えのある声がした。
その声は…
と、パッと携帯のライト機能で
顔を照らすと
『い、猪谷先生……
どっ、どうされたんですか?』
古文の猪谷先生がいた。
何だか様子がおかしい気がするが
普段通り話してみる…
『びっくりさせないでくださ…』
ガシッ…
話の途中で携帯を持った手を
強い力で掴まれ、
コン…カラカラ…
と、落としてしまう。
また暗闇に戻ってしまった。
月が出てきたのか
窓から月明かりが差し込み…
目が慣れてきたこともあり、
少しずつ周りが見えるようになってきた。
『は、離してっ…
先生…なにをっ!?』
先生の変わりように驚いて
睨みつけると
「□□先生…いや、〇〇さん…
私は貴女が好きです…」
『へっ!?』
思いがけないセリフに冷や汗が出る
ジリジリと詰め寄ってくる先生を
避けようと後ずさりするも…
ドンと齋藤先生の机に
ぶつかり、行き止まってしまう。
「一目見た時から…
こうしたかった…」
そう言って
普段の真面目な雰囲気とは
打って変わってギラついた目で
こちらを見てきたかと思うと
『いやっ…やめっ…んっ』
グイッと力強く腕を引かれ、
吸い付くようにしてキスされる。
そして…
机の上に腰掛けるような状態になり、
逃げ場を失った。