第5章 悪役令嬢の憂鬱【黒尾 鉄朗】
「俺は…俺は
〇〇を蔑ろにした訳じゃねぇよ…
白鳥の親父は引っ越してくる前から
いわく付きだったんだ。
住んでいる国の武器を隣国に
横流しするって噂があった。
それを調べるために、
白鳥麗子と関係を深める必要があった…
ただそれだけだ……」
そう言って唇を噛み締める鉄朗様。
私はその言葉に
ほっとしてしまった。
(鉄朗様は白鳥麗子に
惚れているわけじゃないんだ…//)
「じゃ、じゃあ
彼女が兄さんの部屋にいた理由は?」
「……それは、
〇〇が行方不明になったと聞いて
真っ先に疑ったからだ……」
「白鳥麗子を?」
「あぁ。
お前が仕組んだとは思わなかったが、
完全に婚約者の座を奪うつもりだった。
最後の手段で、
〇〇を監禁するなり
殺すなりしてしまえば、
白鳥麗子は婚約者になる
可能性が高まるからな…」
(今朝のも私をほったらかして
情事にふけっていた訳じゃなく、
私のために彼女を問い詰めていたんだ…//)
そして、リエーフ様は観念したように
「それじゃあ、兄さんは
今でも〇〇のこと……」
「あぁ。愛してる…」
ドクン…
『…っ////』
心臓が跳ねた気がした。
耳元で囁かれたんじゃないかと思うくらい
鮮明に聞こえた。
「そっか………
ごめんね…………」
リエーフ様は
思ったよりもあっさりと
謝罪し、拘束を解いてくれた。
腕をさすって
痛みがないことを確認していると
「おい、大丈夫なのか?」
鉄朗様が駆け寄ってきて
私の顔を覗く
言葉遣いとは裏腹に
とても不安そうな顔をする鉄朗様が
なんだか愛おしかった。
『えぇ……平気ですわ…//』
2人の空気を察してか
白鳥さんとリエーフ様は
部屋を出ていった。
「チッ…リエーフのやつ…
〇〇を誘拐するとは……」
ボソッと呟いて
ぎゅうっと抱きしめてくれる。
『…わ、私も…油断してましたわ…
ごめんなさい……
皆さんに迷惑をかけてしまった…』
抱き締め返しながら
普通の会話をする。
今までの不安や嫉妬がみるみる解けていく。
「迷惑なんて考えるな…
俺こそ心配かけて悪かった……」
『いえ、……
私こそまだまだ
王妃になるには修行が足りませんわ…』
暫くお互いに謝り合っていたけど、
面白くなって
笑ってしまった……