第5章 悪役令嬢の憂鬱【黒尾 鉄朗】
白鳥麗子にあることない事
告げ口されて…
昨日鉄朗様を打ったことも
罪にされるかもしれない…
「……フフ…
君はまだ兄さんのことが……」
「俺がなんだって?…」
リエーフ様の声を遮るように
鉄朗様の声がして扉の方を見る
リエーフ様も驚いた様子で
後ろを振り返る。
そこには
壁にもたれて
こちらを睨みつける
鉄朗様の姿があった。
「に、兄さん…
どうして?」
「どうして?だと?
お前こそ…
俺の婚約者に何してる…」
今までに見た事のない
恐ろしい形相で
リエーフ様を睨みつける鉄朗様
その傍らには
白鳥麗子がいた。
しかし、彼女は
やつれきっている様子だった。
(さっきは寝転んでいて
顔まで見えなかったけど、
こんな顔をしていたなんて……)
「あぁ……白鳥さんが
バラしちゃったんだね…」
傍らにいる白鳥さんに
呆れたような声で
そう話しかけるリエーフ様。
「あ、ごめんなさ…」
なんだかリエーフ様の様子がおかしい…
いつもの明るく天真爛漫な様子はなく、
白鳥麗子も彼のそんな姿に
おどおどしていた。
「リエーフ!
お前が仕組んだんだな?」
鉄朗様が訪ねる。
「…………
そうだよ。」
「なぜだ?」
「なぜ?
兄さんこそ、
なぜそんな女に構って
〇〇を蔑ろにしたの?」
「蔑ろ…って、、」
この状況で強気で対抗する弟に
鉄朗様は少し驚いている様子だった。
「兄さんは知らないだろうけど、
白鳥さんが転入してきてから
彼女はいつも図書室近くの
中庭のベンチで泣いてたんだ。
俺は……そんな彼女を
見ていられなかった…」
「泣く…って、……
嘘だろ…そんな姿…俺は…」
リエーフ様の怒りに
鉄朗様は少し動揺した様子だ。
「だから、俺はその女に持ちかけたんだ。
兄さんを口説き落として
子供をこさえてくれたら
君の父上の経営する事業に
国から援助を出すってね……
そしたら面白いように
乗ってきてくれたよ…」
白鳥さんを指さして
怖い笑顔を向けるリエーフ様。