第5章 悪役令嬢の憂鬱【黒尾 鉄朗】
ガチャ…
ドアノブが回ったことを確認する。
(よし、鍵はかかってない!)
私は扉に耳を当てて
物音がしないことを確認する
キィ……
扉を開けて
周囲に誰もいないことを
再度確認…
そろそろと
その部屋を出ていった…
長い廊下を
誰にも見つからないように
こそこそと歩いていると
夜が明けて
光が窓から差し込み始めた…
ふと光の差し込む
窓の反対側に半開きの扉の部屋…
見覚えのある部屋を
そっと覗いてみると…
大きなベッドと
女性の足が目に入った。
どうやら、男性に押し倒されて
ベッドに縫い付けられ
身動きが取れないようだった。
でも、その男性というのが
『鉄朗…さ…ま…』
そして、当然のように
女性は白鳥麗子だった。
彼らは何か話しているようだが
聞こえない…
聞きたくもない……
私はどこかで黒尾鉄朗という男を
信じていたのかもしれない…
ゲームでは裏切られたけど
私の場合は違うかもしれないと……
でもそんなことはなかった…
リエーフ様の言う通り…
彼は私を捨て、彼女を選んだのだ。
私の捜索は兵士達に任せ、
鉄朗様は熱い夜を過ごしていたのね……
ポロポロと涙が零れる…
私は部屋を覗くのに夢中で
背後から忍び寄る影に
全く気が付かなかった…
そして…
「だから言ったろ?
…兄さんよりも俺を選びなって…」
と、耳元で囁かれる。
『んぐっ!?!?』
その瞬間、何かをかがされて
また眠りについてしまった……
**
『……んっ…』
目を覚ますと…
「〇〇…ひどいよ
逃げ出すなんて…」
また、例の部屋に捕まって
今度は両手をベッドに拘束されていた。
『何故…
自分の屋敷に私を…?』
そう、ここは
3人の王子と
王様たちの住む屋敷。
彼は自分の部屋のひとつに
私を閉じ込めていたのだ。
「…フフ…
俺は君を妻にしたいんだ…
だから、
一緒に暮らすのは
当然だろう?」
『……私は…
貴方と…一緒にはなれない…』
振り絞るような声で
最後の悪あがきをする…
なんて無様なの…
私はこれでリエーフ様にも
愛想をつかされて
鉄朗様にフラれて
最悪死刑になるんだわ…