第5章 悪役令嬢の憂鬱【黒尾 鉄朗】
キーンコーン
チャイムがなり、授業が終わる。
「〇〇様!
ごきげんよう
お体はもうよろしいのですか?」
と、クラスメイトから
話しかけられる。
『ごきげんよう…
えぇ、もうすっかり良くなりましたわ。
ご心配をお掛けして、ごめんなさい。』
「いいえ!そんな!
それよりも、
〇〇様がご不在時の
白鳥さんの態度がいつも以上に酷くて…」
と、私にこっそり耳打ちするように話す。
『…まぁ、そうですか…
私の方でも1度、
鉄朗様にお話しておきますわ。』
「…あ、ありがとうございます!」
『それでは、ごきげんよう…』
私は教室を出て帰路に着いた。
カツカツ…
正門の方へ向かって歩いていると…
「ちょっと、やめてって!
嫌って言ってるでしょ。」
「研磨様!
そんなこと言わずに、お願いよ!
鉄郎様の部屋にあげて頂戴!」
と、噴水の辺りでモメる声が聞こえた。
様子が気になり見に行くと
研磨様が白鳥さんに捕まって
何かをお願いされている様子。
しかし、研磨様は
すごい勢いで拒絶している。
『何をしているんです?』
私が割って入った途端
「〇〇っ!」
と、研磨様は私の方へ駆け寄り
私の背中に隠れる。
「〇〇さま…っ!
ご、ごきげんよう…」
白鳥さんはバツの悪そうに
挨拶をする。
『ごきげんよう…白鳥さん、
第二王子である研磨様に
大変無礼な態度を
とっていらっしゃったようですけど…
何が目的ですか?』
彼女を睨みつけると
「あ、兄の鉄朗の
部屋に入れろって脅された…
じゃないと僕の大切な
チェス盤壊すって。」
と、背後の研磨様が答えた。
彼女の手には
研磨様が大事にしている
コンパクトなチェス盤が握られていた。
「そ、そんなの冗談に
決まってるじゃないですか〜
はい、これお返しします。」
私にチェスを手渡して
その場を去ろうとする白鳥さん。
『お待ちください。
鉄朗様の部屋に上がって
何を為さるつもりなのかしら?』
足を一瞬止めたが
走ってその場を去っていった。
「い、いっちゃった…」
研磨様は唖然とした表情で
そう言った。
『そもそも、
鉄朗様自身に頼めば
入れて貰えそうですが…』
私は彼女の背中に
そう言った。