第5章 悪役令嬢の憂鬱【黒尾 鉄朗】
私は図書室の本を持って
木陰に佇むベンチに腰掛ける。
すると…
「こんにちは!」
と言って、私の横に腰掛ける男性。
『!?!?…
ごきげんよう…
リエーフ様…』
(び、びっくりしたぁ〜)
彼も攻略対象の1人、
第三王子のリエーフ様。
異国の側室との子で
第一王子の鉄朗様とも
第二王子の研磨様とも
血が繋がっていない。
「1週間も何をしてたんですか?」
キラキラと
大きな目を光らせて
私に話しかけてくるが
どういう意味かよく分からない質問に
『……?』
首を傾げてしまう。
「毎日このベンチで会ってたのに
先週はずっといませんでしたよね?
風邪ですか?」
『え、ええ…まあ…
少し体調を崩していて…』
毎日会っていた…!?
そんなエピソード
聞いたことないけど…
私は少し動揺したが、
何となく状況は把握した。
リエーフ様と〇〇は
仲が良いみたいね…
この後
リエーフ様のお喋りに
2時間ほど付き合ったおかげで
学校の人間関係などについて
大まかにわかってきた。
ひとまず、私は学校の女生徒からは
信用されており、
白鳥麗子は失礼で品のない女
という扱いらしい。
しかし、男性陣のウケがよく
本人も男性の前と女性の前で
態度を分けているらしい。
(ふう…少し安心した…
私の評判が死ぬほど悪くて
すぐにでも断罪イベントに突入したら
どうしようかと思ったけど…
まだ大丈夫みたいね…)
私はリエーフ様とお別れして
教室に向かった。
先程の様子を一部始終
陰で見ていた者がいるとも知らずに。