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落ちた一雫

第5章  すれ違い






ワイワイと賑わっている今はそう、謝肉祭の真っ最中である。




宴の主役であるハズのレイの姿が見当たらなく、ジャーファルはレイを探し歩いていた。しかし、探せど探せどレイの姿は見つからない。






仕方がないので諦めて王宮へと戻って来たジャーファル。



実は仕事が終わっていなかったので、元から途中で抜ける予定だったのだ。















執務室に戻って来たジャーファルは、出ていく前と様子が変わっていることに気付いた。


ジャ「・・・え・・。」




ジャーファルの机の上にあったハズの書類の山は切り崩され、全て処理が済んでいた。文官達は今現在宴に参加しているのでもし全員が手伝っていてもせいぜい3分の1が減る程度だっただろう。しかし、それが全て終わっている。




ジャーファルの机のイスはまだ少しだけ暖かかった。





ジャーファルは王宮内を歩き回った。しかし、何処へ行っても誰もいない。














ジャーファルは、とある部屋の扉の前に来た。キィ・・・と、静かに開けると、ベッドの端に見えた布団の塊。



ジャ「・・・レイ。」


そう呼ぶと、その塊はビクッと揺れた。


ジャ「レイ。」




ジャーファルがベッドの端に座るが、布団の中から出てくる気配はない。




ジャ「・・・すみませんでした。」



ジャーファルがぽつりと呟く。




ジャ「・・・貴女は、勉強もできるし、戦える。だから、私なんて必要ないと思ったんです。貴女は泣き言も言わないし、大人びてる。・・私がいなくても、問題ないと思いました。」


布団の中にいる人はじっと言葉を聞いている。




ジャ「・・・すみません。一人にしてしまって。」





そう言うと、布団からぽふっと顔を出したレイ。




レイ「・・・怖かった、の。・・ママも、お母さんみたいにいなくなっちゃうのかなって・・。」
ジャ「・・・。」
レイ「ママに迷惑かけてる、とか・・お父さんにも迷惑かけてる、とか・・・思って・・・。」


ぽろぽろと大粒の涙がシーツにぽつぽつとシミを作る。


レイ「私なんて、いなければ良かった、とか・・・いっぱい考えて・・怖くなって、寝れなかった・・。」
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