第5章 すれ違い
銀蠍塔でジャーファルに会って以来、レイは翌日も、その翌日もジャーファルに会える事なく、1週間が過ぎていた。
今は仕事中のはずなのに本人のいない、シンドバッドの仕事部屋で静かに外を見ていた。
レイ「・・・。」
すると、部屋をノックし、文官が入って来た。
文官1「王・・・!レイ様、王様はどちらへ行かれましたか!?」
文官1がレイに話しかけてみるも、レイは反応しない。
文官1「・・・レイ様?」
文官1がレイの傍に寄ると・・・
レイ「・・・知らない・・。」
涙を目にいっぱい溜めたまま、レイはそう答えた。
文官1「・・・レイ様、何かありましたか・・?」
レイ「・・・ママも、お父さんも、知らない!!!」
そう言ってレイは部屋から飛び出して行ってしまった。
文官1「レイ様!?」
文官が慌てて部屋を出るとすでにレイの姿はなく、文官はとりあえず我が上司に報告をしなければ・・!と思い、執務室に戻った。
シン「ジャーファル、いい加減にレイに会ったらどうなんだ。」
ジャ「シン、レイは王女です。貴方の子ですよ。」
シン「しかし、レイはお前を本当の母親のように思っているじゃないか。」
文官が執務室に戻ってみれば、そこにいたのは部屋にいなかった王様。
ジャ「・・・あぁ、すみません。王がいなくて急いで戻って来たのでしょう?」
文官1「い、いえ・・・。」
シン「ジャーファル。」
ジャ「いいですか、シン。元々、貴方の子を私に預けるのが間違いだったんですよ。侍女にお世話をさせるとか・・・。」
シン「俺はジャーファルだから任せたんだぞ。」
何やらレイの事で揉めているらしい。そこで文官はハッとして上司達に話しかける。
文官1「ジャーファル様、シンドバッド王。そのレイ様なんですけど・・・。」
ジャ「・・・そういやシン、アンタレイはどうしたんですか。」
シン「俺の部屋にいただろう?」
文官1「それが、泣いて部屋を飛び出されてしまって・・・追いかけようにも見失ってしまいました。」