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古きパートナー

第12章 答え合わせ


無言が続く

俺が聞きたい事があって誘ったんに

白川は自ら口を開く事は極端に少ない

これは春から変わった事だろう

仁「白川」

『はい』

仁「お前さん、何処まで思いだしたんじゃ?」

『......』

俺は前を向いたまま言う

白川の表情は変わらない

寒い冬、暖房のついた部屋、カーテンを閉めていない窓

そのベランダの窓から見える無表情の白川

感情を表に出す事もしなければ

殺意の籠った怒り以外の感情を失っておる

最近ではテニスをする時の楽しさが戻ってきておる

そんな白川が可哀想でどうにかしたくて

あの笑顔を、また見たくて

今のコイツに何をしてやればいいのかわからなくて

だからとりあえず、会話から始めてみようと思う

好きな食べ物、好きな教科、好きな事

嫌いな食べ物、嫌いな教科、嫌いな事

誕生日に血液型

片っ端から聞く事にした

『...まだ、あまり思い出せていません』

仁「そうか」

5月に真田の家に泊まった時、少し思い出したと言った

それが確かめたくて、本当の「罪滅ぼし」が聞きたい

じゃが、今の関係では

俺が耐えられんくなるだけじゃ、全く情けないのう

私服のポケット、制服のポケット、ジャージのポケット

着る時が違う服装には毎日、同じ物が1つだけ入っておる

俺は無意識のうちにそこを生地の上から

さすったり、掴んだり、とりあえず触れる事が多くなった

水色のブレスレット

小さいときにダブルスをしたパートナーは白色を持って居る

ガラや形は全く一緒で、ただ色が違うだけ

わかりやすいように互いの髪の色で買い、それを交換した

手首につける事は殆どない、汚したくないからじゃ

『このまま日付が変わっても話しませんよ。皆さんの前で答え合わせをするので』

仁「俺が先に聞いてもええじゃないか?」

『参加者全てに教えると、自分の中で決めているので』

仁「そうか」

『明日は早いですから今日はこのくらいで。おやすみなさい、仁王君』

仁「おう、お休み」

空になっておるカップを流しに置いてから帰る白川

『仁王君』

仁「?」

振り返ると、扉の前で靴を履いたまま立っておる

『...いえ、何でもないです』

何も言わずに帰って行った
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