第1章 壱
「優~ちゃん!」
ぎゅー
じゃあな~!
ブンブン手を振って
悟空が自分の席に戻って数分後、
突然声と共に後ろからまたギュー!っと
抱き締め…否突進された。
「うわぁ!」
その抱きつかれた?拍子に
椅子が少しゆれたが、倒れる事はなかった。
でも背中を椅子の後ろで打ってしまった。
地味に痛い。
「いったぁ…、だ、誰!」
ズキズキする背中に手を持っていきながら
急に抱きついてきた相手に
優衣は文句を言おうと相手を見るために後ろを振り返る。
しかし、その人物を見た瞬間言葉を失う事になる。
だって後ろにいたのは…。
「あれ…あんた、h…ブッ!」
「うわっ!ストップ!」
驚いた顔をし目の前を指差し
今にも名前を呼ぼうとしていた優衣に
その人物は慌てて
自分の手で彼女の口を塞いだ。
「…んん!!」
何すんだ!と言う意味を込めて
目の前の人を睨む。
その人ー、彼は深く被った帽子の
奥で困り顔をしながら
「ごめんねぇ?でも今は騒がないで、ね?」
耳元へ囁いて「しぃ」と
空いてる方の手でジェスチャーをしながら
首を傾げ言った。
「……//」
その妙に可愛い(?)仕草に見惚れてしまい
固まってしまう優衣。
その内に口に当てられていた手が外され
「じゃあ、また後でね?」とにっこり笑い
ウインクをすると
くるっと背を向けて恐らく元きた道を帰っていった。
「なんやったん…?」
訳がわからん…。
その後ろ姿を
優衣は体を反らした状態のまま
見送った。
(ってか、なんであの人名前知ってたのかな…?)
やっぱりわからん。
そう悩みながら始まるのを待つ優衣だった。