第10章 10話
「あ!」
「ほら、遅いぞ。」
いつもよりスローペースで走る赤司とそれを必死で追いかける私。
なんとか追いつき今度はディフェンスにまわる。
「山吹のドリブルはドリブルになってない。あれは手毬付きだよ。」
タンタンと流麗な動きに着いて行けず足が絡まり尻餅をつく。
「うわっ。」
私が立ち上がる頃にはすぐそばでキュッとスキール音が聞こえ、その後はネットに掠める音が聞こえる。
「さぁ行こうか。」
いつもは無表情な癖にこういう時だけ満面の笑み。というかドヤ顔。
「それで、今からどこに行くの?」
「そうだな。…こういう格好で外食には行くことが無いからな。…任せるよ。」
それもその筈、赤司が外食となるときっちりシャツのボタンを上まで止めてネクタイを占めて行かないと通してもらえないようなお店を出入りしている。
でも、今日は白のフード付きパーカーに赤のスポーツ用の吸収性の高そうな服に黒のジャージ。
私はというと明るい青色の伸縮性のあるデニムスボンに白のTシャツにグレーのパーカー。
「パスタとかピザでいいなら、高校生とかがよく行く店知ってるよ。」
「そこでいいんじゃないか。」
「食べれるの?」
「俺は海藻と紅生姜以外なら食べれるよ。」
両者共に反論が無かった為、そこでランチをすることになった。
「近くで良かったね。」
「まぁ、そうだな。…でもボールが邪魔だな。」
公園から近いところにあったので大した移動距離もなくすぐに来れた。
とはいえ、荷物を置いて来るのも面倒なのでそのままお店まで来た。
店は祝日の昼間で高校生やカップルでいっぱいだった。私たちは店に着いたのは丁度いいタイミングだったらしく、直ぐに席に案内されたのは幸いだった。
「ね、奢ってくれるんでしょ?」
席に着き第一声の私に人の多さに寄ったのかちょっとそわそわ落ち着かない赤司は私に呆れ顔をした。
「お前が負けたんだ。だがどうせお金持って来てないから今日だけ貸して?とか言うんだろう。本来なら断りたい所だが今回は俺が誘ったので不本意ではあるが俺の奢りでいいよ。」
「利子つける、とか言わないでねー。」