第8章 8話
ピッピー第四Q終了、つまり試合の終わりを意味するブザー音。
その瞬間私は仕事を忘れて外に飛び出していた。
何故かわからないけど走り出していた。
流れる熱いものはわかってるけど、どうして出てくるのかはわからなかった。
単純に悔しいとか悲しいとかで片付けられるものではない。
会場を出ると外は雨が降っていた。
傘を持たずそのままで外に出てしまった私は会場の影に隠れて腕を抱えて空を眺めていた。
ポケットの中で震える携帯をそのままにしておいた。
雨はベタベタした涙を隠してくれる。
数分してからそっと立ち、皆のいる会場へと再び歩いた。
「山吹ちゃん。」
扉を開けたと頃に高尾くんが立っていた。
彼は私のベタベタの姿を見て抱きしめた。
「一人にしてごめん。俺らの為に泣いてくれたんだよな。ありがと。」
高尾くんは私の頭を肩に押し付けた。
「高尾くん、ありがと。こんな事されちゃうと私じゃなくても女の子なら皆勘違いしちゃうよ。」
「それならそれで俺は嬉しんだけどな。けど、ほら、もう負けちゃったし。」
「あの賭けのことなら、もういいの。…なんか私って狡いよね、ごめん。」
そう言って私は高尾くんの肩を手で押して離れようとしたが、逆にその手を掴まれた。
「そんな悲しそうな顔して、そんな格好でほっとけるわけないじゃん。…皆んとこ戻ろうか。」
そのまま私の手を握り控え室に直進した。
皆はそのまま海常対誠凛の試合観戦に行っているらしい。その為私がいなくなったことには誰も気づかなかったらしい。
「控え室でちょっとゆっくりしてく?」
今控え室の中には高尾くんと私の2人だけ。
私は自分の鞄からタオルを出そうとした時、鞄の奥の方でカサッと袋の音がしたのに気付き引っ張り出した。
「おお、それ昨日真ちゃんが同じの買ってたわ。」
私は徐に袋を開けると中から二つぶ取り出し高尾くんと私の手に一つ一つおいた。
包みを破き口の中に放り込むと想像以上の甘さに思わず甘いっと声が出た。
高尾くんも口の中に放り込むと2人で見つめあっていた。
「赤司と何かあったんでしょ?」
高尾くんに見つめられて私は嘘を言うこともままならずうなづいた。
「だからか、あいつ試合の後お前の持ち出した賭けは無効だとか言ってたな。」