第8章 8話
第三Qの終盤、洛山のリードで試合は進んでいた。
秀徳はというと緑間くんを起点に点を取れてはいるもののその差は埋まらない。
それというのも緑間くんに付いているのが赤司だからだ。
同じ時間同じだけコートにいた筈なのに何故かこちらの方が目に見えて疲労の色が見える。
ピーと第三Q終了のブザーが鳴った。
秀徳は深刻そうに話し合っている。
ただ、どこか悟っているようなこの状態になるのをわかっていたような。
ピーとまたブザーの音がなり選手はコートに戻る。
ついに勝者が決まる最終Qがはじまる。
それは第四Qが始まって割とすぐ突然だった。
ダブルチームのついた高尾くん。そして、赤司のマークにある緑間くんはタイミングを見計らっていた。
高尾くんがダブルチームを抜いたと同時に事は起こった。
ボールも持っていない緑間くんはいきなりシュート体制に入りいきなり飛んだ。
そして、そのジャンプが最高点に達した時何も持っていない筈の緑間くんの手の中にボールが入りそのまま空中でボールを投げた。
ボールは相変わらず正確な軌道で放物線を描きながらスッとゴールに吸い込まれていくように落ちて行った。
凄いとかそういう次元では片付けられない事象に観客もチームも興奮を抑えきれない。
コートの中のメンバー達もどうやらさっきの負の連鎖を断ち切れたようでガッツポーズが見えた。
そのシュートを気に点数の差も10点と縮まり流れも掴んだ頃だった。
赤司には緑間くんと高尾くんの2人のダブルチームがついた。
赤司はドリブルをするとため息を一つ、体の向きを変え本来自陣のゴールではない敵陣のゴールへボールを放った。
あっさりと綺麗に入っていくボールに誰もが目を見張った。もちろん洛山の選手も予期していなかった自体に唖然としている。
「僕がいつ手を抜いていいと言った?まだ試合は終わっていない、一時大差を付けたことで緊張感が緩んだか?こんな醜態を晒すぐらいなら差などなくしてしまった方がまだましだ。…だがもし負けたら好きなだけ僕を避難しろ。」
「責任を取って即刻部を立ち去ろう。そして、罪を償うかわりとして量の目をくり抜いてお前達に差し出そう。」
洛山の選手の目つきが変わる瞬間だった。