第8章 8話
そして、迎えた準決勝。
その日は今年一番と言っても過言ではないくらいの快晴だった。
家から会場まで移動中録音しておいたおは朝を聞きながらさつきちゃんから来たメールを確認していた。
頭の中では女の人の声が告げて行く順番に耳を傾けた。蟹座の緑間くんは2位、高尾くんは6位。悪いとも悪くないとも言えない結果だ。
後は1位と最下位の発表、ちなみに私の星座はまだ言われて無かったので今から読み上げられるどちらかだ。
「1位はー?」
可愛らしい20歳くらいのお姉さんの高い声。
ドラムロールがまどろっこしい。
「射手座!!今日はラッキーな事が起こりそうな予感!!だけど気をつけて、喧嘩した友達とあまりうまくいかないかも。」
それだけ聞き、耳につけていたイヤホンを外しカバンの中に携帯を片付けた。
緑間「山吹、遅いのだよ。」
家を出て數十歩歩いた先の曲がり角で緑間くんと出くわした。
私「おはよう緑間くん。昨日一緒に行こうって約束したっけ?」
今日も手の中に不思議なものを握り込んでいた。
緑間「そんなことはとうでもいいが最下位だっただろう。」
緑間くんの言い方に私は眉根をむっと寄せた。
そんな事をした所で態度を買えないのがこの人なんだけど。
私「まぁ、最下位だったとしても占いだし別に気にしてないよ。」
緑間「お前がいいならいいがたかが占いされど占いなのだよ。一応山吹の分まで用意したおは朝グッズを持っておくのだよ。」
そういうとぶっきら棒に押し付けるように私にビニール袋を渡して来た。
緑間「今日は何もない事を祈るのだよ。」
そう一人呟いた声は果たしてどう言う意味だったのか。私の手の中にある袋は風に吹かれたせいで中身がチラチラと見えた。飾り気のないビニール袋の中には、可愛らしい蜂の絵をあしらった白を基調としたパッケージの袋に沢山のレモンが散っている。昔馴染みのあの、のど飴が見えた。
果たしてこれは緑間くんの好みなのか、それともおは朝の指示だったんだろうか。
なんでもいいや。
空には雲が一つもない。こんな晴れの日に雨なんて、ある種天変地異を思わせる。
気持ちが悪いくらい変な気分だ。
私は先を歩く緑間くんの後を小走りで着いて行った。