第8章 8話
会場に着くと、既に何人か来ていたようで個々に走りに行ったりアップしてたりと準備をしていたようだ。
高尾「おはよー真ちゃん。それから、山吹ちゃん。」
昨日のことだから気まずいとは思っていたけれど案外平気だった。
でも、やっぱり目だけが何だか悲しそうだ。
緑間「悪いが山吹、荷物を見てて欲しいのだよ。」
そう言って私の返事を聞くこともなく走りに行った。
いつの間にか集まっていたレギュラー達が輪になって円陣を組みお互いに喝を入れていた。
男子っていいな。
頭の奥でしたさつきちゃんの声に静かに頷いた。
レギュラー達は会場が開くまで軽く基礎連などをして体をあっためていた。
そして数十分後管理人さんがやって来て扉を開くと一気に人は吸い込まれるように入って行った。
今日はついに準決勝、洛山戦。
正直に言うと戦略的にはいろいろ厳しいところが私たち秀徳にはあるだろう。
しかし、やって見なければわからないこともある。
私は、自分の荷物と救急セットを持って先輩達の後に続き入った。
入ったはいいが人が多くてうまく流さてしまい、いつの間にかチームの控え室とは離れてしまった。
すると、背後から聞き覚えのある声がした。
「赤司ー、まだ試合まで時間あるから外行ってくるわー。」
「ちょっと小太郎!今からミーティングだって征ちゃんいってたでしょ!?」
「あー食いたりねぇー。」
そっと振り返り確認すれば案の定彼らであった。
赤い頭のあいつも視界には入ったが目はお互いに合わせなかった。
すると、それに気がついた1人がいた。
「征ちゃん、私たち先行ってるわね〜。」
実渕さんの配慮か、洛山の部員を引き連れさっさとこの場から退散して行った。
そうして残された私と赤司。
お互いに心も体も微妙な距離感を保っていた。
そうして、そんな均衡を破ったのは向こうだった。
「昨日のことはもう気にしていない。謝らなくていい。強者が弱者の言葉に振り回されるなど僕らしくなかった。…高尾と言ったか。つまらない掛けなどする暇があるなら少しでも僕に刃向かえるよう脳味噌を活用しろと言っておけ。では、失礼するよ。」
言いたいだけ言うとさっさと言ってしまった。
わかっていた結果の筈なのに悲しいと思う自分が凄く滑稽に映った。
馬鹿だなぁ。
それは心の何処かで聞こえる悪魔の囁きだった。