第8章 8話
つまり、片付けろということなのか。
私は仕方なく重たい足取りでブツを片っ端から直して行く。
体育館に差し掛かったときだった。
「高尾か。」
「おぉ、真ちゃん。」
相変わらず2人はどこまでも練習熱心な彼らの声だった。どんな時でも相手に合わせ、手を抜くようなことは決してしない、王者故にそれなりの誇りを持った戦いをいつも見せてくれる。だからこそ彼らのバスケを見ている側はバスケを無性にしたくなる。
熱心な人の背を押せるなんてこんなに気持ちのいいことだなんて考えても見なかった。
私は人に恵まれているんだ。
体育館の扉の隙間から2人が必死でボールを追いかける様を少し見ていた。
そんな様子に思い出した光景があった。いつだったか忘れたけど、中学の時、通りかかった第一体育館で練習をしていた彼らを横目で見ていたことがあった。
あの時は体育館が使えなかったので代わりに筋トレという名目で外周させられている時だった。
流れる汗を拭い、全神経を注いでボールをひたすら追いかける彼らを見ていた。
初めてだった、あいつの真剣な眼差しと思いっきり汗をかいて必死で何かをする姿をきちんと見たのは。
思わず外周中に足を止めてしまい先輩に怒られて一人追加で走らされてしまったぐらいだった。
その他にも、放課後体育館の施錠のために下校時刻ギリギリまで残った日だった。
彼らのいる第一体育館を除けば遅くまで残って一人で必死にシュートを入れ続けていたのを見た。
こんなに遅くまで練習していることに何だか自分のいい加減さが恥ずかしかったのを覚えている。
私「帰らないの?」
赤司「あぁ、もう少し待ってくれないか?」
暇になった私は赤司の練習しているコートのとなりで彼の練習が終わるまで待っていたのを思い出す。
私は残る日があれば赤司の練習している姿を見ていたり、たまにバスケを教えてもらったりしていた。
上手く投げられない私を見てくすりと笑う姿に何度も腹を立て罵倒という罵倒を浴びせたり、練習中にちょっと横槍を入れ物凄く怒られた事も。
今、私の背後では高尾くんと緑間くんのボールを付く音を背に私は残りの仕事を片付けるため、体育館を後にした。