第7章 7話
私「二人とも……ま…っ…て。」
あのあと2時間くらいずっと歩きっぱなしで移動していた私達だった。
二人は部活で鍛えているのでまだまだ余裕がある様な顔をしているのに対し、私は鍛えてもいないのでへばっていた。
緑間「だらしないのだよ。とはいえ、早過ぎたのかもしれないな。おい、高尾!」
高尾「…おっけー。」
そういうと私の前に背を向けてしゃがんだ。
これはつまり高尾君におんぶしてもらいながら移動するってわけか。
私「いーよ、歩ける!」
高尾「素直に乗ってくれないとお姫様抱っこしちゃうぜ!」
私は素直に高尾君の背中に乗っかった。
それから数時間後二人の両腕には溢れるくらいの荷物を抱えて歩いていた。
もちろん、私は高尾くんの背から下りて歩いている。
緑間「俺はあと一軒寄って行く予定があるのだが、お前たちはどうするのだよ?」
私「先帰ろうかな、明日早いでしょ?」
高尾「んじゃ、俺が送ってくわ。じゃーな真ちゃん明日、遅れんなよ〜」
緑間「ふんっ。お前に言われずともこの俺が遅刻などえりえないのだよ。」
緑間くんと別れた後、駅に向かって歩き出した私達。
夕方の赤と夜が迫っている黒と申し訳程度の水色の空。
いつもいつも同じ空を見ている。
どんなに背が伸びても届かない空、どこまでも遠い。
幼い頃は高校生になったら空に手が届くんだって偉そうに言った私は、隣のあいつに言われた事を思い出す。
「どんなに大きくなったって俺たちは変わらないよ。」
そう言った。
その時はそんな事ないと憤慨した私だったが今になってわかる。
手を伸ばせば届いたはずの物にさえ届かない私は空になんて届くはずがない。
私がぼんやり空を見上げていると、突然視界が何かに遮られた。
「首、痛めちゃうよ。」
そう言ってそっと私の目から手を離して行った。
高尾「ちょっと寒くなってきたよな。」
私「うん。」
高尾君はそう言うと着ていたカーディガンを脱いで私の肩にかけた。
生暖かい人の体温に私はなんとなく心地が良かった。
高尾「来週からかー、ウィンターカップの予選。絶対勝ってウィンターカップ出場しないとな!」
私「頑張ろうね!」