第6章 6話
その次の日、合宿所から引き上げる為の荷物整理を済ませバスに乗り込む寸前の事だった。
黒子「山吹さん!」
いつもより大きな声に多少驚きはしたものの彼の表情を見てもいつも通り無表情を貫く彼からは次の言葉を待つしかないようだ。
黒子「合宿始めはただの友達かと思っていたんですけど、いつの間に恋人関係になっていたんですか?」
いきなりの質問と内容の意味に私は眉を顰めた。
黒子「高尾くんの事です。」
私「そうだよ。」
黒子「あまりこういった話に首を突っ込みたくはなかったんですが今回は別です。単刀直入に言います。あなたはそれでいいんですか?」
何が?ととぼける事は出来た筈だけどこの空気でそれは流石に許されないだろう。
生憎、今の私にはそんな余裕も時間もない。
それも、わざわざ部員達に時間を貰って話していたからだ。
私「黒子くんの疑問に思う事の意味がわからないよ。」
私は本当に彼が私に対して言った言葉の真意に迫れなかった。
黒子「山吹さんは赤司くんと高尾くん、どちらの気持ちもわかった上での結果ですか?」
黒子くんのいつもと違う物言いに私は少し怯みそうになった。
私「私は二人の気持ちを優先したつもりだよ!」
黒子「今山吹さんが高尾くんを選んだ結果が僕にはわかりますよ。」
私「どういう事?」
黒子「あなたは赤司くんしか見えてないでしょう?」
黒子くんの声はいつもなら透き通っているのに今日はやけにはっきり聞こえ、その言葉には反論の余地がない。
黒子「僕は山吹さんと高尾くんが一緒にいる姿でもお似合いだと思います。ですが、あなたと赤司くんが並んで歩いている姿、僕は結構好きですよ。あんなに表情を変える赤司くんなんてレアですし。」
黒子「それに今回の合宿の時も僕からは山吹さんが高尾くんを見る目と赤司くんを見ていた目が違う様に見えました。」
黒子「だからって、僕が赤司くんと同中だったから彼を推している訳ではありませんよ。それに、僕は山吹さんをそういった目で見る輩の味方につく気はありませんので。…僕は山吹さんの味方です。」
黒子くんの言葉に終始圧倒され何も返せなかった私は呆然としたが、それでも私の心はもう決まっていた。
私「忠告ありがとう、黒子くん。冬はよろしくね。」