第6章 6話
元々、大きな山一つをキャンプ場にしただけのものだったから人間の手が加えられていないこの森の中、暗さも合間って何も見えないおかげで何処かわからない。
私「いてっ。」
少し大きめの石に足を躓かせそのまま前のめりに倒れこんだ。
私は苛立ちと反省とがごちゃ混ぜになった。
いつの間にか目には涙が溜まっていた。
その場に寝転がって何となく見上げた空はキラキラと輝き、鈴虫かコオロギかの声が私の耳に届いた。
いつもと違う音も場所も空気も全て、普通なら不安材料である筈なのにどうしてか不安や心配や恐怖、そういった類いの感情は私には存在してなかった。
でも、その理由はわかっていた。
「かえでちゃん、戻ろう。」
その声を聞いた私は頬を膨らましてそっぽを向いた。
「ふふっ。星がよく見えるね。…綺麗。」
私はそっと横に向き直すと彼は私の隣に寝転んで私と同じように星を見ていた。
「かえでちゃん、もう迷子にならないでね。」
静かにそういった彼の横顔を私は横目で確認すると彼は優しい顔で空を見ていた。
「俺が捜さないといけなくなるから、一人でどっかいっちゃだめ。」
そう言って立ち上がると私に手を伸ばして起き上がらせてくれた。
「でも、私が迷ってもせいくんは必ず見つけてくれるでしょ?」
私が嫌味を含んだ笑顔で問いかけると彼は少し面倒そうにだけど満更でもない顔をした。
「反省する気ないんだ。…タッチ、はい次かえでちゃんが鬼。」
「あ、ずるい!!」
彼はそう言うとしてやったりのドヤ顔で走り出した。
喧嘩をすれば決まって謝ることなんてなかったのは双方の性格上当たり前な話。
鬼ごっこをしながら来た道を辿っていたらしく、気づけばお母さんたちの元についていた。戻るとお母さん達も私を探していたのか、凄く怒られた。
その様子を横で見ていた彼は口元に笑みを浮かべて見ていた。それに少し腹は立ったが彼の口の端にご飯粒がついていたことに気づき私は黙っておくことにした。
ー今思えば、確かにあの頃の恐怖に対する免疫力は異常だった。
そんな事を思いながら私は起き上がり、携帯のライトを頼りに重い足取りで歩き始めた。
少し歩いたところだった。
「山吹ちゃん!!」
突然前方で影が動いたかと思えば高尾君だった。