第4章 4話
それは一瞬の事だった。
私の体が誰かの腕によって横に引き寄せられ、バランスが取れず横の人に抱きついた。
その拍子に私に好き勝手していた男の手が離れ、私はようやく解放された。
ちょうど電車も停車し、私の最寄り駅だった。
扉が開いた瞬間急いで電車から飛び出した。
その時、何か忘れてる様な気がして出てきたドアの方へ。
…私の視界には何とも言えない凄い光景が写っていた。
位置関係をざっと説明するとドアの前で立っている人物、そしてその前で駅員に取り押さえられている人物。
それを取り囲むその他大勢。
そのドアの前の人物はさっきまで私が忘れていた赤司。
取り押さえられているのは赤いTシャツの男。
場の様子から見ても大体予想出来たが、つまり赤司がチカンを捕まえたようだ。
赤司は凄く冷ややかな目で赤いTシャツの男を見ていた。その空気に誰も口を挟まず、唯事が済むことを見届けているように見えた。
「きゃあ!!」
「触るなぁっ!!離せぇっ!!」
突然雄叫びが聞こえ、今までずっと黙っていた赤いTシャツ男がイキナリポケットからカッターナイフを引き抜き振り回し始め、その人を抑えていた駅員が腕に切り傷をおった。少し傷が深かったのか血が結構流れ、その場にうずくまり呻き声を挙げていた。
「おい!!離れろ、そこを通さないとお前等全員殺すぞ!!」
男は周囲にカッターナイフを向け叫んだ。
「おい、危ないだろう。それを即刻しまえ。」
そう言ったのは赤司だった。
ざわざわし始めたこの場に似合わず静かな物言いの筈なのに何処か威圧感を感じる上に逆らってはいけないようなオーラを出している。
赤司「もう一度だけ言う、それを即刻しまえ。」
「っ黙れ!!ガキが俺に命令してんじゃねぇよ!!」
赤司「…ちっ…。すいません、どなたか駅員さんの手当てと警察の手配をお願いします。」
赤司がそう言うと周りは急か急か動き始め集まっていた集団も我に返ったように電話をしたり駅員さんの介助をし始めた。
私もその言葉にはっとして何故かわからないけど赤司の方に走って行った。
赤司「山吹!!何をしている、こちらに来るな!!」
赤色と少し色素の薄い黄色の目が私の方を焦った表情で見た。
あんなに焦った赤司の顔を見るのは生まれて初めてだ。