第3章 3話
私「高尾くんごめん、調子乗っちゃって。今ティッシュ出すから。」
私は高尾くんの腕からすり抜けて手を伸ばし彼にティッシュを渡した。
高尾「…あ、りがとうな。」
歌は後半の大サビの部分だろう所が今部屋全体に流れている、けど歌詞はわかるのに何だかメロディが出てこない。
横を見ると高尾くんは乱れた制服もそのままに入ってもいないグラスにストローを突っ込んで吸っていた。
何だか話しかけられる状態じゃなかった。
私は歌っていられる状態ではないのであと少しだったけど仕方なく演奏停止ボタンを押し曲を中断した。
それから、自分の鞄から今日使う予定だった新品のスポーツタオルを出して放心状態の高尾くんの元へ行った。
私「高尾くん?大丈夫??」
私が話しかけてもぼうっとしたまま何かを考え込んでるようで全く反応しない。
仕方なくタオルで制服の濡れている所を拭いてあげた。
その時、高尾くんの前に回り込んで彼の胸元辺りを拭いていた私の背中に腕が回った。
私「ちょ、高尾くん!?!?」
彼は何だか息が荒い。
高尾「あれ、ごめん山吹ちゃん。」
そう言う彼は少し体が熱くて弱々しい。もしかしなくてもこれは間違いなく熱がある。
私「高尾くん、今日熱があるのに部活に来たでしょ。」
高尾「…いやー、ばれちゃったか。」
私は高尾くんから離れずそのままの体制で話を続けた。
私「スポーツ選手は体が基本なんだからちゃんと体調管理はしないとダメだよ。今日、無理しなくとも私はいつでも暇なのに。」
高尾「あー、ごめん。でも、それは今日で良かった。」
私「何で今日?」
高尾「…これから部活忙しくなんじゃん。そんなことしたら益々俺の余裕がなくなっちゃうと思ってさ。」
その瞬間、私の背中に回っていた両腕が少し強みをました。
高尾「…ごめん、俺さ初めて会った時から山吹ちゃんの事結構好きなんだわ。」
高尾「でも、山吹ちゃんには他に大事な人がいるんだっけ??」
私「…ごめん。」
私がそう答えると高尾くんはさみし気に笑った。でも何かを決心したような顔だった。
高尾「でも、今はそいつと付き合ってるわけじゃねんだろ??」
私「そーだけど、」
高尾「じゃあさ、俺にもまだチャンスはあるわけだ。」