第2章 夏祭り
パッと夜空がカラフルな光に照らされ、遅れてドーンという音が波を揺らす。
「お、花火だな〜」
「綺麗だね〜」
空には大きな華が次々と咲いては散っていき、バラバラに歩き回ってた人混みもその動きを止め、暫し夏の風物詩を楽しんでいるようだった。
「ねえクザン」
ライが肩の上からペチペチと頭を叩く。
「連れてきてくれてありがとう」
「急になによ、悪いもん食ったか?」
失礼、とまた頭を叩く。
人混みはキツイし、何より疲れて眠いが、ライが楽しんでくれたなら良かったか。
海兵も市民も、皆がその場で空を見上げては歓声を上げる。
平和だな、なんて似合わねえか。
肩にかかるライの重みが心地よく、思わず笑みを漏らした。
「……ン、クザン!!!」
「今度はなに」
ぼーっと心地よい温かさの幸福感に浸ってるとまた頭を叩かれた。
「放送!」
なんのことだ、と聞く前にその答えは耳に入った。
『大将クザン、今すぐ元帥室へ来るように』
静かな声に聞こえるが頭に浮かぶセンゴクさんの怒った顔。
「……」
「…なんかセンゴクさんめっちゃ怒ってるけど、何やらかしたの」
ライが苦笑いしているのが見なくてもわかった。
「悪いけど帰るぞ」
「え?え、ええええええ」
不満そうなライを肩から降ろし、手を引き人混みを走る、走る。
センゴクさんに書類頼まれてたの忘れてた…!!!
「ちょ、クザン!!嘘、まだ花火終わってないいい!!」
ライの叫びを掻き消すようにまた一つ、空に華が咲いた。
夏祭りはまた来年。