第5章 任務の段
男は私の苦無を止めたが、私は退く気は無かった。
苦無の金属音が重なる。
だが、違和感を感じたのは直ぐにだ。
男の瞳に明らかの動揺が見えた。
それに違和感なのだ。
「なんだ?先程の殺気はどうした。」
そう言い放つと隠そうとしてるのがバレバレなくらい男は動揺が増した。
(何なんだ?)
そう疑問が生まれた瞬間
「半助!油断するな!!」
山田先生の声が聞こえ、その声に男も反応したが一瞬の隙を見逃さなかった。
キン!
男の忍刀が飛び地面を刺した。
男は苦無を持ち直したと同時に言った
「殺りな。……出来るならね。」
その声は先程の男の声じゃないのが直ぐに分かった。
(この声……まさか!)
私は地を蹴り、苦無を男…いや…敵に振る
敵は私の苦無を受け止めるも攻撃をして来ない。
先程はあんなに攻撃をしてた。
今だって攻撃のチャンスはあった。
なのに……しない。
[皆さんは手を出さないで下さい!!]
矢羽音で山田先生を含む先生方に告げる
(一か八かだが…!)
苦無を左手で持ち、右手で持つ敵の苦無を止め逃さないよう上にそのまま上げる
空いた敵の左手首を右手で掴み
見えた。
手の甲の傷
見間違う訳がない。
「彩さんなのか?」
そう聞くと敵はフッと軽く笑い
「流石は教師ですね。半助さん。」
声があの時と同じ
(嘘だろ。)
だが、この状況で彩さんであろう相手には不利だ。
私は相手の耳元に口を寄せ
「すみません。悪いようにはしない。」
小声で言うと同時に、相手のガラ空きの腹に膝蹴りをした。
「カハッ!……」
相手は気を失い、私の腕に倒れた。