第10章 番外編 夜久side
別に聞く義理はないし、特に興味もない。
でも、チームの雰囲気がおかしくなるのは困る。
それに……長身のハーフがうなだれてる姿はかなり邪魔でウザい。
モヒカンが他校のマネ見てもじもじしてる姿に匹敵するぐらいウザい。
「俺、好きな人ができたんですけど……」
あ、さっきの話はここにつながるのか……
要領を得ない話の断片を繋ぎ合わせると、クロと同じ女の子を好きになったけどリエーフは玉砕したらしい。
クロとこのリエーフがねぇ……
つか、あのクロ相手って……
「クロさん、もうずっと彼女と関係とかあったみたいで……」
「そりゃ無理だろ」
「……?」
「あのクロ相手に張り合うなんて、絶対無理だろ」
「いま夜久さん、無理って2回言いましたよね」
「だって無理だろ。無理、無理、無理」
あのクロだぞ。
「なんで無理なんですか!?」
そんなこと訊く時点で、既にクロに負けてんだろ。
「おまえさ、クロの性格知ってんだろ」
「………意地悪、ずるい、優しくない」
おまえは子供か!
「そうじゃなくて……クロは欲しいものは絶対手放さない」
あいつは欲しいものは絶対に手にいれるヤツだ。
そのための努力も惜しまない。
売店で1日3個しか売られないスペシャルサンドを余裕で歩いていって買えるのは音駒高校広しといえどもあいつだけだ。
そのためだけに日々売店のおばちゃんとのコミュニケーションも万全だ。
もちろん、彼女も。
歴代のクロの彼女も、狙ったら100%。
クロが関係してる女なんて、それ自体が「俺のモノだ」「無理」って言ってるようなもんだ。
頭脳でも経験値でも格上のクロと張り合えるはずがない。
リエーフが勝てるのは身長とハーフで美形だってことだけ。
でもロシア語も喋れないんじゃ、それも微妙。
「なんだかわかんねぇけどさっさと諦めて次いけよ」
「簡単に諦められるなら夜久さんにこんな話しません!」