第7章 番外編 リエーフside
「クロさん、最近なんかおかしいっす」
「………かな」
「馬鹿リエーフ、研磨に訊いたってしょうがねだろ」
猛虎さんに言われて「そうですね」とうなずくと、部室の床に座ってゲームしてた研磨さんにガコッとすね蹴りされた。
「まあ、たしかにちょっといつもとは違うかもな」
「ですよね!」
音駒男バレのオカン、夜久さんの一言は重い。
夜久さんがYESならYES.
NOならNO。
それが音駒男バレ部のルール。
「森然での合宿後あたりぐらいから、ちょっとおとなしいよな」
「そうなんですよ。なんかこう毒舌にパンチがないっていうか」
「そうかぁ?」
猛虎さんだけが納得いかないのか、首をかしげる。
「今日も練習終わって速効帰ったしな」
夜久さんが「おい」と足元の研磨さんを見た。
「クロ、なんかあったのか?」
「……」
「合宿のとき、夜に抜け出した日あっただろ。あのあたりから何か変わったんだよな、あいつ」
「………俺、抜け出してないし。知らないし」
「あ、そうだ。研磨さん自主練もほとんどしないで速効寝てましたよね、毎晩」
「リエーフ、うるさい」
ゲシッ。
2回目の足蹴りをくらいながら、1か月前の合宿を思い出す。
あの頃から、彼女も変わった気がする。
クロさんの話をしなくなった。
会ってはくれるけど……なんか違う。
「つか、もう鍵しめるから早く出ろ」
夜久さんにせっつかれてぞろぞろと部室を出る。
外はもう真っ暗で、時計を見るともう20時近い。
「腹減った~!」
「なんか食ってくか」
「お、いいっすねえ!」
「あ、俺お先に失礼しま~す」
みんなが盛り上がってる中、大きな声で挨拶すると、先に駅に向かって走り出す。
背中に「おい」と声がかかったけど無視してダッシュする。
今日こそは……
絶対彼女に「うん」って言わせてやる。
こんなにずっと好きって言いつづけてきたんだから。
今日こそ決着をつけてやる。
そう、思ってたのに……