第8章 ひと休憩の小さな嵐
「おはよ…」
教室に着いた私は、息を整えながら席に着く。
すると近くにいた早川がパンを頬張りながら不思議そうに近寄ってきた。
「どうしたんだ?息切(れ)なんてして」
「ちょっとね…」
「朝(れ)んは今日は休みだっただ(ろ)?」
「そのはずなんだけど、いろいろあってね…。慰めて早川」
「?」
首を傾げて口をもごもごさせながら、早川は頭をポンポンと撫でてくれた。
うん、癒された。
「おーい。HR始めるぞ~。座ってー」
そういえば今日は体力テストだ。
それでさっき予習とか言って走ったんだっけ。
正直運動は苦手だからあまりしたくない。
特にシャトルランは…。
「みょうじ!今日体(りょ)くテストだな!」
「そんなワクワクしてんの、早川くらいじゃないの…」
体育は4時間目。
お昼前の体育ほどテンションが下がるものはない。
お腹空いてるのに力なんて出るわけがない。
「はぁ…」
「なまえ…そんな溜息つかないでよ」
「だって体力テストとか…いらなくない?」
「私もそれ思うけど」
4時間目、運動場に出て準備運動をする。
男女一緒というのがまた嫌な理由だ。
まあでも、早川のテストが見られるのは良いことだ。
「はい次みょうじさーん」
「はーい」
とりあえず、適当にやっとけばいいでしょ。
「みょうじ頑張れ~!」
早川が私に手を振っている。
可愛くて、だらけていた背筋が伸びた。
これは頑張るしかない。
「…で?頑張って前屈したら足つったの?なんで?」
「私が聞きたい…」
さすがは運動音痴の運動不足。前屈でつるってどういういことだ。
「恥ずかしいね?」
「ほんとにね。…もう治った、大丈夫」
「早いなマネージャー」
「まあね」
呆れる友達は心配せずに笑っていただけだ。
わかりますけどもその気持ちは。
とりあえず、黄瀬にだけは絶対に言いたくないと思った。
のに。
「なまえさん今日足つったんスか?」
…なんで知ってるんだよ。