第3章 第一章三部
「絶対だぞ!!」
念には念を。俺は異常なまでに同じ言葉を何度も繰り返し叫ぶと、煙が上がっている方向に向かって走る。
なぜそうもして、太一を来させないようにするのか。
理由はただ一つ。『恭輔が死んでしまった』という事実を、まだ太一には知らせていないからだ。
言う機会はいくらでもあったのに、俺はその事実を太一に伝えることが出来なかった。
そもそも、太一は極度の怖がり。なので、恭輔が死んだ事を知ってしまえばどうなるかくらい、馬鹿な俺でも分かる。
それに太一は、俺にとってかけがえのない親友。親友だからこそ、傷付けるような真似はしたくなかった。
とにかく俺は走った。太一が追いかけて来れないよう、全速力で。
建物の角を勢いよく曲がり見えてきたのは、燃え盛る炎を見つめる先輩達の姿。その中には、高松さんもいる。