第3章 第一章三部
「なんか臭くね?」
鼻を摘まんだ太一が、此方を向いて言った。
言われるまでは気づかなかったが、確かに何か臭う。それは、汚物の臭いとは違った異臭。例えるなら、ゴミを焼いた時に出る煙の臭いだ。
「ああ──」
あまりの悪臭に思わず鼻を押さえる。
キョロキョロと周囲を見渡せば、太陽が沈む方角から黒い煙が立ち上っている。
確かあそこには焼却炉(しょうきゃくろ)があったはず。
それに気づいた瞬間、嫌な予感が頭を過る。
恭輔だ。たぶん、恭輔の遺体を燃やしているに違いない。
「俺が見てくるから、お前はここにいろ!!」
「は? なんで?」
「なんででも!! いいか? 絶対に来んなよ!!」
俺は勢いよく立ち上がり、太一に言い聞かせるように同じ言葉を何度も繰り返し言った。
「お、おう──」
突然立ち上がった事もそうだが、あまりにもしつこく言う俺に太一は呆気に取られたようで、ぽかんと口を開けたまま動こうとはしない。