第3章 第一章三部
「お前、顔色悪いぞ?」
廃墟に着くと、古びたベンチに腰かけた俺に太一が声をかけた。
「そうか? 別に普通だけど?」
親友に迷惑かけまいとする俺は、『なんてことない』と、平静を装う。
けれど、俺の身体は正直者。胃の痛みは先程よりも更に増している。
「ならいいけど」
俺の隣に腰かけた太一は、必要以上に何かを訊いてくるような真似はせず、安心したと言っているかのように笑顔を見せた。
ところで、二人で運んだ携行缶の行方はどうなったかと言うと、終始偉そうにしていた運転席の男が持っていったわけだ。
そもそも、俺はその人の名前をよくは知らない。たしか高松さんに『木山(きやま)』と、呼ばれていたような記憶があるが、今さらフルネームまでは訊けない。