第3章 第一章三部
「誰にも見つかってねえだろうな?」
「はい」
車を止めてあった場所まで戻ると、運転手の男が運転席側の窓を開けて俺に訊いてきた。
俺はすぐに返事をし、足元に置いてあった携行缶を手に取り彼に見せる。
「さっさと後ろに積め」
だが、携帯を弄りだした男は全くこちらを見ず、命令口調で指示。
「うっス」
俺はその指示通り車のトランクの開け、出来るだけ隅っこの方に携行缶を積んだ。
「まだか?」
トランクの扉を閉めようと手を伸ばした時、男は突然携帯から目を離し後ろへ振り返る。
唸るように出された声は、明らかに苛立っている証拠。彼の機嫌が悪いのは言うまでもない。
「すいません、終わり──」
「さっさと乗れ!!」
携行缶を積み終えた俺は、変に相手を刺激しないよう弱腰で話す。しかし、男は俺の話を最後まで聞かず、狂ったように声を荒げた。
「は、はい!!」
慌てて後部座席のドアを開けると、先に車へ乗り込んでいた太一がホッとしたように俺を見る。
声を潜めて理由を訊けば、どうやら居心地が悪かった様子。
『独り言ばかり言う運転席の男が不気味で恐い』
と、太一は男が見ていない隙に俺の耳元で小さく言った。