• テキストサイズ

俺は悪くない。

第1章 第一章 一部


 例の廃墟を出て一時間強。先程から、俺の携帯は鳴りっぱなしだ。
掛けてきた相手が誰なのか、携帯を見なくてもすぐに分かる。

──絶対に高松さんだ。

「やべえよ。高松さん、キレてるって──」

 缶ビールや菓子類が入った袋を抱えた太一が、蚊の鳴くような声で言った。太一の歯がガチガチと音を立てて震えている。
 これから自分の身に降りかかるであろう出来事を想像すると、俺も他人事ではない。高松さんを怒らせたら最後。もう二度と朝日が拝めなくなる可能性だってあり得る。

「もしもし」

 俺は出来るだけ高松さんを刺激しないよう、彼に諂(へつら)うような声で電話に出た。

“てめえ、何シカトこいてんだ!? ワンコールで出ろや!!”

 その瞬間、鼓膜を突き破るような怒鳴り声が受話口から響き渡る。しかし、音が割れていて声が上手く聞き取れない。
/ 70ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp