第1章 第一章 一部
『好き』の一文を読んだ瞬間、ゾクゾクとした寒気が俺の身体を襲う。
“よくもまあ、会ったこともない相手に好きなどと言えたもんだ”
と、頭の中では女を馬鹿にしながらも、
“俺も(ハート)”
女に返事を送る。
もちろん、好きなどというのは真っ赤な嘘。ただヤれるだけの相手が欲しい俺は、相手の調子に合わせ応える。
“本当? 本当に本当?”
すると、返ってきたのは面倒臭い内容のメール。女はしつこく好きかどうか訊ねてくる。
(めんどくせー)
俺は途中まで打っていたメールの内容を消し、画面を待ち受けへと戻した。
しつこい女は、後々面倒な事になる。過去に同じような女で苦い経験をしたことがある俺は、即座に友達リストから削除。それと同時に、アクセス拒否。繋がりを一瞬で断つ。
これでもう、マミという女からメールが届く事は無くなった。
名前も偽名を教えていたので問題ない。
でも、ひとつだけ心残りな事がある。それは、その女の顔。写メで見た限りでは結構好みの女だったので、“もったいない”と少しだけ感じてしまっている自分がいた。
しかし、面倒な女は早い段階で切っておいた方が無難。こういう女はストーカー等に なりうることも多々ある。と、明かりの消えた携帯電話をズボンのポケットへしまった。