第7章 偽りもの
『ん…ん。』
目を開けると、そこには見慣れない真っ白な天井がある。意識がはっきりとしてきた私は、勢いよく身体をおこす。
「っい…!!』
起き上がった瞬間、頭に鈍い痛みが走る。二日酔いの症状だろうか。
(…なに…これ。てか、私なんでこんなところに寝て…)
そこで初めて、自分が置かれている状況を把握した。ここは、『aspiration』のスタッフルームで、私が横になっていたのはそこに置かれた白地のソファだ。
(今…何時だろう。)
______ガチャ
ソファから立ち上がろうとした瞬間、スタッフルームの扉が開かれた。
「よっ、目覚めたか?」
そこには、この頭痛の元凶が立っていた。私は彼を軽く睨んだ後、ふいっと顔を背ける。
「あぁ…いや、その…悪かった!その件については俺も酔ってて…本当に申し訳ない!!」
足早に歩いてきた彼はソファの前に正座し、土下座しそうな勢いで頭を下げる。私は慌てて彼の頭を持ち上げる。
『はっ隼斗くん!!もういいですから、土下座はやめてください!!』
「いや!このままじゃ、俺の気がすまない!!」
そう言ってまた、頭を下げようとする。正直、彼の気などどうでもいい。
彼に土下座をされたところで特に気分が晴れたりはしない。むしろ逆効果だ。
『ほんとにいいんですってば!私はもうこの通り_____つ!』
「っ!?おいっ!」
自分と彼の大声のせいで、二日酔いの頭痛が悪化したのだ。ガンガンする頭をさりげなく庇いながら、彼に大丈夫だと笑顔を見せる。それでも心配そうな顔をする彼に話題変えようと別の話を振る。
『そ、そう言えば…今何時ですか?』
「…へ?あ、あぁ…えっと12時半過ぎ…」
『え…?ええっ!?』
なんとなく振った話題だったが、それはかなりの重要事項だったようだ。終電も気になるところだが、やはり一番最初、思い浮かんだのは『彼』のことだった。
以前、帰りが遅くなった一件から私はできるだけ定時に帰宅するようにしていた。
(…まずい。なんだか嫌な予感がする。)
あの彼のことだ。きっと私が帰ってくるまで、起きているつもりであろう。
いや、それくらいならまだいい。彼はいつも、私の想像をはるかに超えた行動をとるから気が気でない。