第6章 なにもの
「はぁーっ………!」
いきなり大きなため息をつく彼。いったい何が理由かわからず、私は目を白黒させる。
『えーっと…どうしたの…?』
「いや…その……絵夢は…恋人、とかと過ごす…のかなって…思ってたから…。」
彼は言葉を詰まらせながら、ため息の理由を告げていく。その内容を聞くに、彼は私に恋人がいるのか否かということことを気にしているらしい。
『私、彼氏…いないよ?』
「…そ、そっか!うん!…なら全然、いいんだけど。」
何がいいのかはよくわからないが、とりあえず彼の中での考えはまとまったらしい。
しかし、私の論点はそこではない。クリスマスパーティーに参加するかということだ。
『…それで、クリスマスパーティーなんだけど…』
「え…?ああ、行ったらいいんじゃない?」
『え…行って…いいの?』
思いの外あっさりと返ってきた言葉に、戸惑いを覚える。私の想像では、多かれ少なかれ駄々をこねるか心配事を並べるかくらいするのではと思っていた。しかし現実は違った。
『クリスマス…椎、ひとりになっちゃうよ…?』
「あーそっか。でも別に、俺…ひとりでも大丈夫だし。それに、それ…毎年やってるんでしょ?」
『いや、そうなんだけど…さ。』
クリスマスパーティーに快く送り出してくれるのはとてもありがたいことだ。
しかし、どこかそっけない彼に寂しさを感じてしまうのは私のわがままなのだろうか。
『じゃあ…24日は帰り遅くなるから、適当に何か食べておいてね…』
どこか心に引っかかりがあるのを態度に出さないようにして彼に告げる。
「24日ね、わかった。」
彼は窓際に吊ってあった洗濯物をたたみながら答える。特にこの話題について、深く追求するつもりはないらしい。そんな彼になぜか苛立ちを覚える。
『…もう寝る。おやすみなさい。』
「んー…おやす______」
______バンッ
彼のあいさつを聞き終える前に、扉を力任せに閉める。扉の向こうで彼が小さく悲鳴をあげるのが聞こえた。
そのまま真っ直ぐベッドへ向かい、倒れこむようにして布団に顔をうずめる。