第4章 働きもの
休憩時間が終わった午後、私は電話の対応に追われていた。
『はい、では15時にご予約承ります。お気をつけてお越しください、お待ちしております。失礼します。』
うちの店はネットと電話予約でほとんどの予約枠が埋まってしまう。そこに予約なしでいらっしゃるお客様もいるもんだから従業員は大忙しだ。
『えっと、この日の予約は全部埋まった…かな。』
ぶつぶつと独り言を呟きながらPCに表示された予約表に打ち込んでいく。
「あ、結構先だけど、この日僕いないから他の人で回してくれる?」
『わっ!?驚いた…って、え?マサさんいないんですか?』
私の背後からPCを覗き込むようにしてマサさんが顔を出した。
「ごめんごめん、ちょっと野暮用がね。」
『そうですか…。』
マサさんがいない日は店がなかなかうまく回らないことが多い。臨時まとめ役の隼斗くんが頑張るも、やはりマサさんのようにはいかない。
私の不安げな表情を察したのか彼は困ったような笑みを浮かべ、
「大丈夫、絵夢ちゃんなら問題ないよ。」
と私の肩を軽くたたく。少しだけ不安が拭われた気がしたが、完全になくなったとは言えない。
「マサさーん、ご予約のお客様がお待ちですよー!」
「おっと、もうそんな時間か。」
マサさんが女性従業員に呼ばれる。彼は手を挙げて返事をすると私頬を人差し指でつついてきた。
「お客様の前では、笑顔で。ね?」
『…ほい。』
頬をつつかれているせいで間抜けな返事をしてしまった。その返事を聞いて、少し声を出して笑った彼は、そのまま私のもとを去った。
(マサさんに心配かけちゃったかな…。)
自分は一人前だと思っていたが、やはりこういう場面で戸惑ってしまうのは半人前の証拠だろうか。彼がいるときのようにとまではいかなくとも精一杯がんばらなくては。