第4章 働きもの
新しいヘアカタログを並べ終えた後、マサさんと隼斗くんとたわいない会話をしていると続々と他の従業員が出勤してきた。美容室にしてはなかなかの人数だと思う。
「じゃあ、そろそろ店を開けますか。絵夢ちゃん、外の札、返してきてくれる?」
午前9時。こうして、いつものように『aspiration』の一日が始まった。
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『ひぃー…』
昼の休憩時間。私は他の従業員と入れ替わりでスタッフルームへと足を踏み入れる。それなりに知名度のあるこの店にはひっきりなしに客が訪れる。
接客をしているときは、それに夢中で気がつかないが、やはりずっと立ちっぱなしのため疲労感はそれなりに感じる。
(…今日は妙にお客さんが多いな。)
大変ありがたいことだが、週の初めからこの客の量は体力的に少々厳しい。
__________ガチャ。
「おー、絵夢か。お疲れさん」
『…隼斗くん、お疲れ様です。』
「なんだなんだ?元気ないなぁ。」
『そう言う隼斗くんは元気ですね…』
スタッフルームの扉から顔を出したのは、私と同じく昼休憩に入った隼斗くんだ。しかし、私とは違い、彼の表情には全く疲れの色が見えない。
「まあな!さっきのお客さんと少し話が盛り上がっちゃって、休憩とるのが遅れちゃったけど。」
『いつものことじゃないですか。その元気少し分けて欲しいです…』
「よし、いいぜ!分けてやる!」
『…へ?』
そう言うと彼は私に手を伸ばしてきた。
__________ワシャ…
私の頭に彼の両手が添えられる。そして、まるで大型犬でも撫でるかのように激しく手を動かす。
「よーしよしよしよしよし!」
『ま…待ってください隼斗くん!髪ぐしゃぐしゃになるっ…!ていうか、頭そんなに振らないでくださっ…』
少し強引で、骨張った男性らしい彼の手。止めてほしいのは確かだが、心地よいと感じている自分もいる。
「お?急に静かになってどした?大丈夫だ、髪ならちゃんと戻してやるから。」
彼はそう言って、私の髪を手櫛で優しく梳いていく。
『ありがとうございます。少し元気もらえました。』
「…そうか!そりゃよかった。」
ニッと笑みを浮かべた彼はそのまま、自宅から持ってきたであろう昼食をとり始めた。