第3章 お買いもの
「…絵夢!」
__________グッ
後ろから強引に手首を引かれる。私同様、私を拘束していた男性らも驚いていた。不意打ちということもあり、拘束はいともたやすく解かれた。
「あなたたち…いつまでいるの?」
右手で私の手首を掴み、左手で私の肩を抱く彼から出たのは、少し前とは比べようの無いくらいの低い声だった。
背丈が高く、線は細いが均等のとれた体つきをしている彼は、いつになく威圧感があった。
ブツブツと文句を言いながら離れてく彼らを見て、椎は息を吐く。
「はぁ………」
椎が来たのなら、やはり事情を説明していっしょについて行ってやればよかったなどと考えつつ、彼らの後ろ姿を見送っていると
__________ムグッ
私の両頬は彼の大きな手で挟まれ、離れて行くふたりを見送っていた視線は今は真っ赤な宝石を見つめざるを得ない形になっている。
『あの…どうしたの?』
両頬を強めに挟まれているため少し話しにくい。離してほしいが彼から感じるオーラがそれを許さない。
「誰…あの人たち…?」
『道案内頼まれて…椎を待たせてるし、戻ろうとしたんだけど戻れなくて。困ってるっぽかったし…』
「あの顔のどこが困ってるの…ただのナンパでしょ?ちゃんと振り切りなよ…」
(ナンパ……?)
まさか自分がそんなものの対象になるとは思っておらず、つい頭に疑問符が浮かぶ。
道を尋ねられたことは何度かあったがナンパされたことはない。いや、先ほどのがナンパだとすると以前にも知らぬ間にナンパをされていたのかもしれない。
そんなことを考えている間も、背の高い彼とずっと視線を合わせる形で顔を固定されているため、少々首が痛い。
『ああ…気づかなかった。じゃあ、ありがと…だね。』
「気づかなかったって……それより、なんで俺のそばから離れたの…?」
『あ!これ!』
私は手元にふたつ抱えていたほんのり温かいそれを彼に差し出した。
「…カフェ、オレ…?」
『うん…私このカフェオレ好きで。ちょっとぬるくなっちゃったけど体あったまるし、少しは疲れ…とれるよ?』
「……そっか…ありがと」
一瞬目を見開いた彼は左手で缶を受け取り、私の頬を包んだままの右手で軽く頬を撫できれいに微笑んだ。
『いいえ…どういたしまして。』
左頬を撫でる彼の手がとても心地よい。