第3章 お買いもの
その後、彼の日用品を買いに他の店をまわった。歯ブラシやシャンプー、バスタオルなど、普段必要だと思われるものを全てカゴに入れていった。
もちろん彼は遠慮したが、そんな彼を押し切って、なんとかレジを通した。
無事に夕飯の買い物まで済ませた私たちは帰路についた。私の視界からはいつもの帰り道の中、彼だけ切り取られたような印象を受けた。
「絵夢…ありがとう。こんなにたくさん…」
そう言った彼の両手には、様々な店の紙袋やナイロン袋が握られている。
「お金は…ちゃんと返すから…!もう少しだけ、待ってて…」
こういうところは本当に律儀というか頑固だと思う。あまり物欲のない私は、久々のショッピングを存分に楽しめたので満足である。
『だから、それは家事をこなしてくれればいいって…』
「それはダメ。」
ここはどうしても譲らないようなので、勝手に言わせておくことにした。
「…でも、美味しいごはん…作るから。早く家、帰ろう。」
困惑した表情は一転し、彼は口元を綻ばせた。夕日で赤く照らされた彼に微笑みを返し、私たちは歩を進めた。