第15章 小心もの
「もしもし…俺だけど。なにかあった?」
出た。とりあえず彼は生きているらしい。いつの間にか、彼には自分がいなければ生きていけないなどという勝手な妄想を押し付けていたが存外そうでもないらしい。
「…?どした、おーい…聞こえてる?」
そう考えると、なぜだかすごく胸が痛くなる。いろんな思いがぐるぐる巡って考えがまとまらない。とりあえず今わかるのは、寂しさと辛さが大きな渦の大半を占めているということだ。
『椎…』
「あ、よかった。ちゃんと繋がってた。」
『寂しい。』
彼がいなければ生きていけないのは私の方だ。今さっきまで忘れていたくせに虫のいい話だが事実ならば仕方がない。
「えっと…枕変わると眠れない…とか?」
いつも通りの彼なのに、いつも通りということにどうしてこんなにも胸が痛くなるのだろう。
『ごめん…ちょっと声が聞きたくなっただけだから、あったかくして寝てね。おやすみ。』
「えっ?絵夢っ、待って!」
____________________________プツ
『何やってんだろ…大人のくせに、情けない。』
半ば強引に通話を切った。彼には彼なりの考えがあって、自分の思い通りにならないのは当たり前のことだ。もっと心配していると思ったし、連絡もくれると思っていた。
思うところはいろいろあるが、大人になりきれない私の心では、どうしても意地が勝ってしまう。素直になれない自分に嫌気がさす。
『私、自惚れてたんだなぁ…ははっ。』
____________________________ファサッ
「外の夜はまだ冷えますよ、お嬢さん。」
『…マサ、さん。』
背後から現れたマサさんに羽織をかけられる。こうもタイミングよくこられると、聞かれていたのではと肝を冷やす。
「なんでそんな隅にうずくまってるの?こっち、おいでよ。」
そう言って自分の座るベンチの隣を軽く叩く。私は彼の言葉に素直に従う。腰を下ろした私の顔を覗き込んむ。
「ははっ、泣くほど寒かったの?鼻も真っ赤だ。」
私の濡れた頬を包み込むように両手をそえる。暖かく柔らかなそれに、またしても涙腺が緩む。
「どうして泣くの?君はいい子なのに。」
何も言わずに、涙を流すだけの私をなだめるように彼の空気が優しく包み込む。暗闇に慣れた目が捉えたのはいつも通りの優しい笑み。