第14章 若輩もの
周りの景色が一転し、後頭部には弾力のあるスプリングの感触。視界には天井が映り込んでいる。
少し視線をずらしたところに乱れた毛先が見える。椎が覆いかぶさるようにして私をソファに押し倒した。
いや、抱きついたが勢いあまってソファにダイブしたという方が正しいだろうか。
『椎…さすがにこれは重い。』
「今のは、俺…悪くない。」
この状況をどう見れば私に非があると言えるのだろうか。いくら椎が細身だとはいえ、さすがに成人男性の体重に耐え切れるほど丈夫にできてはいない。
それに加え、椎は私の首元に頭を寄せているためその位置で話をされるとくすぐったくて仕方がない。
『そこで話されるとくすぐったいんだけど。』
「えーっ…」
『…っだからくすぐったいって!どけなさい!』
わざと吐息交じりで会話する彼は確信犯に違いない。そうとなれば話は別だ。
『ふーっ…』
先ほどのお返しにと耳元に息を吹きかけてやった。椎にも同じ思いをさせてやろうとちょっとした悪戯心からの行動だった。
「っ…ぅあ!!」
『えっ…!?』
_________ダンッ!
椎の背中が思い切り床に打ち付けられる。それと同時に、抱きしめられていた私もソファから身を投げ出す形になる。
「いっ…た…。」
『だ、大丈夫!?ごめんね!!今、氷持って…いや湿布の方が…それとも何か塗り薬とかいるのか_____』
「落ち着いてよ…俺は大丈夫だから。それより絵夢は大丈夫なの…?」
『私は丈夫だからっ、それより椎の方が痛かったでしょう?どこか怪我とか…やっぱり冷やした方が_____』
「だから落ち着けって!」
気が動転していた私は、椎の声で我に返る。目の前には少し困ったような顔。
『ごめん、私…』
「大丈夫だから。そんな悲しそうな顔しないで。」
『だって私…さっき大人気ないことした…。』
そうだ。私がくだらないこと考えないで、椎をどかせていたらこんなことにならなくて済んだはずだ。
「ねぇ、今日何の日だっけ?」
『…椎の、誕生日?』
「そう、一つ大人になったの。絵夢に一つ近づいたの。一年で一番絵夢に近い日…なの。」
少々無理矢理な気がするが、言われていることは理解できる。彼にじっと見つめられるとその瞳の宝石に吸い込まれそうになる。