第3章 あれから1年
これは、本来原作と呼ばれる話の1年前の物語ーー。
ー*Yukimura side*ー
入学式からはや1年が経った。
今日は始業式で明後日が入学式だ。
今まで先輩しかいなかった分、自分達に後輩ができるとなると、何だか変な気持ちになる。
でも、テニス部の人間として、期待できる後輩が入るかもしれないと思うと、少しワクワクした気持ちになる。しかし、
(クラス替え、か···)
正直、クラスが変わらないで欲しい。
毎年あるのだから仕方ないのだが、変わってほしくない人物がいる。
(希はどう思っているのかな···)
虎咲希ーー、その人物は、小学校から上がってきたばかりのものだとは思えない、いやまぁそれなら真田や柳はどうなるって話何だが、そんな二人とは違う大人びた人で。
1年前、同じクラスになって、しかも隣の席になって、彼女の反応がとても新鮮だった。
あの朝、誰よりも早く家を出た。理由は騒がれたくなかったから。結果は大成功。
早めに提示されていたクラスの振り分け表を見て自分のクラスへ向かった。自分が一番だと疑わなかった。
なのに、もう教室には人がいた。
ーーーとても綺麗な女の子だった
今までどんなに女性に言い寄られてもなにも感じなかった俺が初めて女性に関心を向けた。
彼女は本を読んでいた。入ってきた俺に気付いていないのか、それとも気付いていて無視しているのか。
普段なら気にも留めない。なのに俺は彼女が気になった。
その瞳に俺を写してほしい。俺だけを見てほしい、と。
名前も知らない赤の他人にしかも、女の子にこんなことを思うなんて…
だから
「ねぇ、君…」
俺は話しかけた。ミーハーかもしれない。けど、彼女と話してみたかった。
読んでいた本を閉じ、おもむろにこちらに振り向く。
俺は息が止まった。